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「今月も給与計算で残業することになった……。」「採用業務がなかなか終わらない……。」「また、社会保険の書類に不備がある……。」
人事業務に携わっている方であれば、一度は上記のように思います。そこで、当記事では煩雑になりがちな人事業務を効率化する『人事システム』について解説します。
人事システムの導入を検討している方は、ぜひ一度読んでみてください。
そもそも人事システムとは何か?
人事システムは、人事におけるほぼ全ての業務を効率化するために作られたシステムの総称です。人事の業務は多岐にわたっているので、全ての業務を効率化するのはシステム化しない限りは不可能に近いため作られました。例えば、「給与計算」や「勤怠管理」など1つの内容に特化したシステムもあれば、「採用から退職」までの一連の業務を効率化するためのシステムも存在します。
人事システムを導入する目的・理由
人事システムの概要がわかったところで、人事システムを導入する目的や理由について解説します。
業務効率化
人事システムを導入するための一番の理由が、業務効率化になります。
人事の業務内容はとても種類が多いため、業務効率化による人的ミスや担当者への負担の軽減が欠かせません。例えば、毎月の給与計算や年末調整などは、多くの担当者の悩みのタネとなっています。特に雇用形態が異なる従業員が多く所属している企業では、給与の計算方法も異なるため負担もかかりやすいのです。
上記の場合であれば、給与計算システムを導入することによって、効率化が図れる可能性があります。
給与計算システムは、各従業員の勤怠データを元に所得税や年末調整処理などを自動化してくれるので、担当者の負担や人的ミスが減らせます。
業務の属人化防止
業務の属人化防止も目的の1つです。特に「人事評価」は属人化されやすい業務の1つとされています。やはり、人によって評価にバラツキがあるので、社員のモチベーションも保ちにくいのです。そこで、人事評価システムを導入すれば、属人的な評価を防げますし、社員のモチベーション管理もカンタンに行えます。
また、人事評価だけではなく、特定の担当者にしかできない業務を減らすことによって、部署のパフォーマンスを一定に保てます。スキルによって属人化しやすい業務も、システムによって均一化できるのも重要な目的の1つです。
人材管理
最近、もっとも注目されているのが人材育成の分野です。社員個々のスキルについては、人事が見えにくい部分でもあったため、この部署にはどんな人を配属すればいいのかがわからなかったからです。このニーズに答えるシステムが「タレントマネジメントシステム」と呼ばれるシステムです。具体的には、どの社員がどんなスキルを持っているのか?どの資格を所持しているかなどを管理することで、より効率的に人材を活用できるようになります。またスキル管理ができるということは、この人にはこんな研修を受講させようと考えられるので、「eラーニングシステム」を導入したり、研修を受講させたりできます。
企業にとって、人材育成をシステム化することのメリットは大きいといえるでしょう。
人事システムの導入形態
次に人事システムの導入形態について、それぞれ解説します。
オンプレミス型
オンプレミス(On-premise)とは、サーバーやシステムを社内に直接設置して使用する方法です。
オンプレミス型の主なメリットは、
- システムをカスタマイズしやすい
- 自社のシステムと連携しやすい
- セキュリティ面が強い
が、あげられます。
逆にデメリットは、
- 初期費用がかかる
- システムの構築に時間がかかる
- トラブル対応を自社で行わなければならない
になります。
コンプライアンス遵守を重視している企業であれば、オンプレミス型の方が向いている場合もあります。
クラウド型
クラウド型は、オンプレミス型とは異なり自社内の設備は使用せず、ネットを介して運用する形態です。
ほとんどの人事システムは、クラウド型が採用しています。
主なメリットは、
- 導入コストが少ない
- 社外、社内と場所を問わない
- システムのアップデートを自動で行ってくれる
になります。
デメリットは、
- カスタマイズしにくい
- セキュリティ面に不安がある
です。
アウトソーシング企業のように自社での面談がなかなかできない場合、クラウド型の人事評価システムを導入すれば、自社でも出向先でも面談がやりやすくなるでしょう。
人事システムの種類
ここからは、具体的に人事システムにはどのようなものがあるのかをみていきます。
採用管理システム
ATSとも呼ばれる採用管理システムは、文字通り企業への採用業務を効率化するために作られたシステムです。
採用管理システムができた主な背景としては、
- 少子高齢化による日本の人口が少なくなった
- インターネットやスマートフォンの普及による応募の簡素化
- グローバル社会による競争激化
の3点があげられます。
上記背景により、企業側もいかに素早く能力のある人材、あるいは自社の理念にマッチした人材を採用する必要に迫られています。
そのため、採用業務の効率化は企業側でも課題といえるでしょう。今後、採用管理システムは欠かせない存在となってくるかもしれません。
給与計算システム
給与計算システムは、毎月の給与計算を効率化するために作られたシステムです。
一口に、「給与計算」といっても、
- 勤怠実績による残業代の集計
- 所得税の計算
- 年末調整の処理
など、多くの業務があります。
さらに、雇用形態は人それぞれなので、所得税の計算方法ひとつとってもバラバラです。人事業務の中でもヒューマンエラーや担当者への過度の負担が発生しやすい領域といえるでしょう。給与計算システムは、価値観ですら多様化している現代にとってはなくてはならないシステムの1つといえます。
労務管理システム
労務管理システムは、社会保険や労働保険など労務に関わる業務内容を効率化するために作られたシステムです。
以前は、労務関連の書類作成はほぼ全て手作業で行っていました。
そのため、書類ひとつとっても
- ハンコの押し忘れ
- 必要事項の書き漏れ・書き損じ
- どの書類を提出していないのか
などを把握する手間があったのです。
しかし、労務管理システムを導入すれば、提出書類の電子化や進捗状況を一元化できます。また、わざわざ市役所へ行って提出する必要もなくなるでしょう。
勤怠管理システム
勤怠管理システムは、従業員の出退勤を管理するための作られたシステムです。給与計算の効率化や労働環境の実態把握をしたい場合は、導入を検討したいシステムです。例えば、部署ごとの残業時間を見える化することで、退社時間のルールを設定したり、業務ボリュームの調整をしたりできます。システムによっては、顔認証や指紋認証によって打刻できるシステムもあるので確認してみましょう。
人事評価システム
人事評価システムは、社員ひとりひとりの頑張りと評価を一元管理するために作られたシステムです。人事評価ほど、属人的になる作業はないといってもいいかもしれません。その社員が頑張っているかどうかは見る人によって違うので、評価はまちまちになりがちです。また、企業によってOKRやコンピテンシー評価など採用している評価方法も違うというのも1つの理由となっています。人事評価システムは、上記のような諸問題を解決するために作られているので、興味があれば調べてみてもいいでしょう。
タレントマネジメントシステム
タレントマネジメントシステムは、従業員のスキルを可視化することによって、各々の従業員を適切な部署に配属できるように作られたシステムです。先の採用管理システムが、「いかに素早く優れた人材を確保するのか」を目的としているかに対して、タレントマネジメントシステムは、「いかに人材を適した部署に配属させるか」を目的としています。社員を適した部署に配属することで、自社の経営目標を達成するのが、タレントマネジメントシステムの最終的な目標です。
タレントマネジメントシステムの中には、人事評価システムの機能を取り入れているシステムもあり、適切な配属から育成までをサポートしてくれるシステムもあります。
eラーニングシステム
eラーニングシステムは、ネット上で社内研修を受講できるシステムです。ネット上で配信されているので、いつでも研修を受講できるのがメリットになります。eラーニングシステムは学習者の進捗管理を一元化できる管理システムと学習教材の2つから作られています。先のタレントマネジメントシステムと組み合わせることで、既存社員のスキルアップや新入社員をすぐに現場に配属させられるようになります。
人事システムを導入する際のポイント
人事システムには、どのようなものがあるのかがわかったところで、導入する際にはどのような点に注目するべきなのかをまとめました。
導入目的は何か
まずは、「なぜ人事システムを導入するのか」を再度確認しましょう。
目的も無く、なんとなくで人事システムを導入すれば失敗するのは目に見えています。
- 自社の人事業務にはどんな問題点が潜んでいるのか?
- どの人事業務を効率化したいのか?
- その人事業務を効率化したことによるメリットは?
上記のような問題点や疑問をリストアップした上で、自社に適した人事システムを選ぶようにしましょう。
月々のコストはいくらか
人事システムを導入する際は、コストについても確認しましょう。高額であれば継続するのは難しいですし、安価すぎるものであれば機能面に不安が生じます。ほとんどの人事システムは、社員の数に応じて料金が変わる従量課金制を採用しています。自社に当てはめた上で、コストに見合うかどうかを確認してみましょう。
システムの提供形態はどうなのか
人事システムの提供形態についても確認が必要です。前述の通り、オンプレミス型はセキュリティ面やカスタマイズ性に優れていますが、導入する際の初期コストがかかります。逆にクラウド型は、初期コストがあまりかかりませんが、カスタマイズしにくいというデメリットがあります。ですので、今後利用していく中で追加の機能や改善点があれば、クラウド型では後々改善する際のコストがかかるといえるでしょう。
導入した後の状況も踏まえて、導入形態についても確認する必要があります。
何かあった際のサポート体制はどうなっているか
人事システムを導入後、何かあった時のサポート体制についても確認しましょう。導入前でも導入後でも、素早いサポートがあると安心して使用できるからです。
具体的には、
- 運用が開始してからのサポートは存在するのか?
- サポートセンターの対応時間は何時から何時までか?
- サポート方法はどのような内容か?
などを確認しましょう。導入前や導入後に関わらず、サポートをしっかりと受けられるかどうかも確認項目の1つとなります。
社員にとって使いやすいシステムか
実際に従業員にとって使いやすいかどうかも重要です。いかに機能が充実していても、現場のニーズに応じてカスタマイズができないなどの欠点があれば、Excelで運用していたように、元に戻る可能性があります。システムを導入する前に、無料で使用できる期間があれば実際にシステムを使用したり、現場のニーズ通りにカスタマイズができたりするかを確認してみましょう。優れたシステムであろうと、現場が使いにくいシステムであれば話になりません。
他のシステムと連携できるか
すでに導入しているシステムと連携できるかについても確認が必要です。他のシステムと連携がとれれば、より多くの業務を効率化できる可能性があります。例えば、給与計算システムを導入する際には、すでに導入している勤怠管理システムと連携できれば相乗効果が期待できるでしょう。他のシステムとの連携では、ERP製品やAPI連携できるかも検討してみましょう。
ERP製品とは
ERP製品とは、人事業務全てを一元管理できるように作られた製品です。全ての業務を1つのシステムで完結できるように作られているので、業務ごとの連携がとりやすいのが特徴です。例えば、勤怠管理システムと給与計算システムを連動させて、勤怠実績から給与計算もスムーズにできます。
また、給与計算システムと労務管理システムが連携していれば、給与情報から社会保険関係のデータを作ってそのまま電子申請という流れを作るのもできます。ERP製品の代表例として、『SAP』や『COMPANY』があります。
API連携とは
人事システムの中には、SmartHRのようにAPI連携を導入しているシステムもあります。API連携は、人事システムではないサービスとの連携もとれるのが特徴です。例えば、サイボウズやChatworkのようなグループウェアや、自社で開発したスケジュール管理アプリとも連携がとれます。
人事システムを自社で開発するには?
自社に合うシステムがない場合は、いっそ自社で開発するという方法もあります。自社で人事システムを開発できれば、開発コストしかかからないのと完璧にカスタマイズできる点が魅力です。
具体的な方法は2種類あります。
1つは「Mosp」のようなオープンソースシステムを利用して開発する方法。もう1つは、複数のERP(Enterprise Resource Planning)製品の機能の一部を組み合わせて開発するベスト・オブ・ブリードという方法があります。
どちらの方法をとるにしても、入念な計画と相応の開発コストがかかる点に注意が必要です。以上、人事システムについて、解説しました。
参考になれば幸いです。