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この記事では「IT資産管理ってなんだろう」「IT資産管理を行わないとどうなるの?」「そもそも何を管理すればいいの?」と言った質問についてお答えします。まず結論から言いますと、IT資産管理はどの企業でも必須と言えるでしょう。
本記事では特に、IT資産管理とは何か?に始まり、目的と必要性、対象、メリットとデメリットまで広く解説します。IT資産管理がわからない方は、ぜひ一度読んでみてください。
IT資産管理とは?
以上のことから、IT資産管理とは固定資産のうちITに関わる資産を適切に管理することと言えます。
IT資産とは具体的に、下記が挙げられます。
- サーバー
- パソコン
- スマートフォン
- タブレット
- プリンター
そして、管理項目としては、次のように多岐にわたります。
- 購入時期
- 端末番号
- インストールされているソフトウェアやアプリケーション
- ソフトウェアのライセンス数
- セキュリティソフトのバージョン
前提として、そもそも資産は2種類存在する
そもそも、資産とは何でしょうか?ここでは、固定資産と流動資産の2種類について解説します。
流動資産とは?
流動資産とは、1年以内に換金できる資産を指します。具体的には、預金や受取手形、有価証券があげられます。また自社の製品の在庫や企業に貸したお金(貸付金)や得意先から振り込まれてないお金(未収金)も流動資産に含まれます。
固定資産とは?
固定資産とは、流動資産とは逆に1年以上保有することが前提の資産を指します。
固定資産は、
- 有形資産
- 無形資産
- その他
の3種類に分類されます。
土地や建物などの不動産は有形資産。特許権や借地権などの法律上の権利といった形のない資産は無形資産。そのどれにも当てはまらないものがその他の固定資産として分類されます。ちなみに、会計上1年以内に使い切る資産は固定資産ではなく消耗品費となります(ボールペンなど)。
今回解説するIT資産は、固定資産に含まれます。資産となっている以上は減価償却などの会計処理を必ず行わなくてはいけません。このため、紛失や購入時期がわからなくなるなどのリスクがあると、会計処理も厳しくなるためIT資産は適切に管理する必要があります。
IT資産管理の目的
では、なぜIT資産管理を行わなければならないのでしょうか。
ここでは、IT資産管理の目的と必要性について、以下の観点から解説します。
- ITライフサイクル
- コンプライアンス
- セキュリティ
ITライフサイクルを管理するため
第一の目的は、ITライフサイクルを管理するためです。
どんなIT資産にも必ず寿命があります。その寿命が把握できなければ、事前に購入予算を策定できないからです。パソコンやサーバーなどのハードウェアであれば、経年劣化で性能が落ちる可能性もあるでしょう。
また、Excelなどアプリケーションもいつまでも使えるわけではなく、かならずライセンス期限が設けられています。
場合によっては、今後のビジネスにも耐えられるなくなるため、ITライフサイクルを管理する面においてはIT資産管理は行うべきでしょう。
企業のコンプライアンスを遵守するため
IT資産管理を行う最大の目的がこのコンプライアンス遵守のためです。そもそもIT資産管理という言葉が広まり始めたのは、ソフトウェアメーカーが自社のソフトウェアを適切に使用しているのかを監査し始めたのがキッカケとされています。
例えば、ExcelなどのOfficeのアプリケーションのライセンス数は2台までとします。そして、従業員の誰かがそのライセンスを無断でコピーをし、インストールして使用したことがバレたら、損害賠償となるケースもあります。
ですので、こういったライセンス契約違反などの事態を回避するためにもIT資産管理は徹底しなければいけません。
セキュリティ対策や情報漏洩を防ぐため
情報漏洩やセキュリティ対策もIT資産管理の主目的の1つです。というのも、許可されていないソフトウェアやアプリケーション(シャドーIT)がインストールされることによって、社内の機密情報が漏洩してしまう可能性があるからです。昔で言えば、WinnyのようなP2Pファイル共有ソフトが例としてあげられるでしょう。
またセキュリティ対策という意味で言えば、OSやウィルス対策ソフトが最新版にアップデートされていなければ、マルウェアなどのウィルスにとっては格好の餌食となります。最悪の場合、ビジネスの継続事態困難となる可能性もあるため、IT資産管理においては最も重要な目的の1つといえるでしょう。
IT資産管理をしないとどうなるのか?
では、逆にIT資産管理をしないとどうなるのでしょうか?結論から言えば、前述の内容と逆のことが起こります。
先程の視点から、改めて解説します。
ITライフサイクルが管理不可能になる
IT資産管理を行わないと、ITライフサイクルの管理ができません。
- 誰がどのパソコンを持っているのか
- そのパソコンはいつ買ったのか
- そのパソコンにはどんなアプリケーションが入っていてバージョンはいくつなのか
上記全てが把握できなければ、新しいIT資産を購入することもできませんし、余計なIT資産を購入することによりコストが増えることもあります。
例えば、WindowsなどのOSのサポート期間が終了すれば、そのバージョンのWindowsが入っているパソコンを買い換えなければなりませんが、パソコンの購入時期が把握できなければ購入計画自体立てられなくなります。
ITライフサイクルは企業にとって重要な取り組みのひとつなので、ITライフサイクルの管理ができないのは致命的です。
コンプライアンスが遵守できない
コンプライアンス遵守ができなくなるのも大きなリスクとなります。コンプライアンスが遵守できない企業は、社会的に見ても信用度が低いと言わざるを得ません。前述したOfficeの例で言えば、ライセンス契約の違反により、今後社内でOffice自体使えなくなることもあります。
コンプライアンスを遵守するためにもIT資産管理をしないというわけにはいかないでしょう。
IT資産自体の場所が特定できなくなる
IT資産自体の場所が特定できなくなるなどのIT資産紛失のリスクもあります。IT資産管理をしていないということは、誰がそのIT資産を所持しているのかも把握していないと同じことです。
当の本人ですら、把握していなければ、紛失している可能性もあります。もし悪意ある人間に、そのIT資産が渡っているのであれば情報漏洩の可能性も少なからずあるでしょう。
適切な管理をしているのであれば、仮に情報漏洩があったとしても原因究明はできるため対策を打つことができます。
許可されていないアプリケーションやクラウドサービスが利用されてしまう(シャドーIT)
IT資産が管理されていないことによって、許可されていないアプリケーションやクラウドサービス(シャドーIT)が利用される恐れがあります。
シャドーITが存在することによって、情報漏洩の可能性があるからです。便利なフリーソフトが実は「トロイの木馬」のようなウィルスだったというケースも少なからずあります。
後述するIT資産管理システムには、許可されていないアプリケーションをインストールできなくする機能もあるため、こういったリスクには備えたいところです。
IT資産管理の管理対象
IT資産管理の目的や必要性を理解した上で、ここからは具体的にIT資産管理の管理対象について解説します。
パソコンやサーバーなどのハードウェア
まずはパソコンやサーバーなどのハードウェアについてです。
ハードウェアの管理では、
- 資産名(型番など)
- 固有の資産暗号
- 取得年月
- 帳簿上の価格
- 導入先の部門
- 使用者名
など、会社によって管理する項目は多少違いますが、一般的には上記の項目があげられます。上記が把握できなければ、誰がどこで何を使っているのかが把握できないでしょう。また場所がわからないということは、どのソフトウェアが入っているのかも調べようがありません。
ある意味、IT資産管理では最も重要な項目になります。
ソフトウェアとライセンス
次にアプリケーションなどのソフトウェアとそのライセンス管理です。そもそも、どんなソフトウェアが入っていて、ライセンス形態がどのようになっているのかを管理します。
先程も書いたコンプライアンスの面では、最も重要な項目となるでしょう。具体的には、ソフトウェアがどのような状態であればインストールできるのか?どれだけインストールできるのか?などを把握できないといけません。
セキュリティ関係
最後はセキュリティ関連です。
正直、セキュリティ管理についてはこのセキュリティソフトされ入れていれば問題がないとかバージョンはこれでいいなど正解はありません。
1つ言えることは、それぞれの企業で決めたセキュリティポリシーに沿った運用をすることが有効ということです。具体的には、インストール可能なソフトウェアとそうではないソフトウェアの線引きです。
このセキュリティ管理で最も有効なのが、IT資産管理システムに付属されているアラートシステムです。このアラートシステムにより、許可されていないソフトウェアのインストール制限や警告などを発することができます。
IT資産管理システムを使うメリット
ここまで、IT資産管理の目的や必要性。そして管理対象について解説しました。小規模の会社であれば、手動で管理できるかもしれませんが、大企業となると不可能に近いでしょう。
ここでは、そんなIT資産管理を手助けするためのIT資産管理システムを使用するメリットについて解説します。
管理作業の効率化
何と言っても、管理作業を効率化できるのがメリットです。ほとんどのIT資産管理システムは、すでに解説した3つの内容を一元管理できるからです。
例えば、資産そのものの情報を管理できるインベントリ管理機能を使えば、社内ネットワークに接続された機器であれば情報を自動収集できます。特にパソコンのインベントリ情報は種類も多いため、IT資産管理システムによる管理作業の効率化は大きなメリットとなるでしょう。
ソフトウェアやライセンスの管理が容易
また、ソフトウェアのライセンス管理が容易に行えるのもメリットとなります。そもそも、ライセンス管理をするためにはそのソフトウェアの利用実績を把握しなければいけません。先のインベントリ機能を使用すれば、自動でソフトウェアの利用実績も集計できます。先にも触れたライセンス契約違反により、今後先々ソフトウェアが使用できなくなるとビジネスが継続できない可能性もあります。
コンプライアンス遵守も継続できるメリットを考えると、IT資産管理システムの恩恵は大きいと言えるでしょう。
常に最新のセキュリティ対策ができる
常に最新のセキュリティ対策が打てるのも、大きなメリットです。
セキュリティソフトのバージョンが古いままだったり、そもそもセキュリティソフトが入っていなかったりすれば、そこはセキュリティーホールとなるからです。例えば、すでにリリースされたOSやソフトウェアで見つかったセキュリティー上の弱点に対して対応できるセキュリティパッチを適用したり、許可されていないプログラムをインストールできなくしたりできます。
さらに、万が一ウィルスに感染していたり許可されていないソフトがインストールされていたりしたら、本来のネットワークとは隔離されたネットワーク内でこうした問題点を解決する検疫システムの機能も備えています。
常に最新のセキュリティ対策を打つことによって、ビジネスの継続をできるようにするのもIT資産管理システムのメリットになります。
IT資産管理システムを使うデメリット
では、逆にIT資産管理システムを使うデメリットについて解説します。
社内ネットワークに接続されていないデバイスは対象外
いくら、IT資産管理システムが便利だったとしても社内ネットワークに接続していなければ意味がありません。この場合、そもそもIT資産管理システムの対象外となってしまいます。対象外になるのを防ぐためには、管理職の方々が定期的に社内ネットワークに接続するように周知徹底させることです。
特に、長いこと出張している為社内ネットワークに接続できていないデバイスや、普段は電源が落ちているはずの予備機などは、対象外となる可能性があります。
ポリシーやルールの策定が必要
It資産管理システムを使うには、社内でポリシーやルールを定める必要があります。そもそも、どのようにIT資産管理を行うのかが決まっていなければ、IT資産管理のしようがありません。
このIT資産管理のルールやプロセスをどのように決めるかは、国際IT資産管理者協会や一般社団法人ソフトウェア資産管理評価認定協会などのホームページを見てみるといいでしょう。
最新の情報が載っているので、参考にした上でポリシーやルールを定め、自社にはどんなIT資産管理システムが適切なのかが把握できるようになります。
まとめ
以上、
- IT資産とは何か
- it資産管理の目的と必要性必要
- it資産管理を行わないとどうなるか
- it資産管理の管理対象
- it資産管理システムのメリットとデメリット
について、解説しました。
参考になれば幸いです。