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情報システム部門に配属されると、キッティング作業に携わることが増えるかと思います。当記事では、そもそもキッティングとは何かに始まり、キッティング作業を外部に委託するアウトソーシングのメリットまでを解説します。
- 情報システム部門に配属されたばかりで、これからキッティング作業を始める方
- キッティング作業をアウトソーシングするメリットを知りたい方
は、ぜひ一度読んでみてください。
そもそもキッティングとは何か?
キッティングとは、パソコンやスマートフォンなどのデバイスを自社の環境に併せて最適な状態にセットアップする作業です。
例えば、自社に新しく入った社員に向けてパソコンやスマートフォンを配布する必要があったり、最新のOSをインストールするために古いパソコンを一括で買い替えたりする際に必要な作業となります。また、オフィスを移転する際にネットワークの再設定も必要となる可能性もあるため、情報システム部門に配属されたら必須の作業となるでしょう。
キッティングの方法と手順
キッティングには2つの方法があります。
ひとつは、1台1台手作業で行う方法と『クローニング』という1つのデバイスの設定を別のデバイスにコピーする方法があります。
どちらを選択するかは、キッティングする台数によって決めますが、それぞれ解説していきます。
手作業で行う場合
手作業で行う場合は、下記のような手順が多いようです。
- デバイスの開梱作業
- BIOSのアップデート
- WindowsやMacなどのOSのインストール
- ネットワークの設定
- 部署ごとに必要なアプリケーションのインストール
- セキュリティ対策
- 各種設定
- 資産管理台帳への記入
数台であれば問題ありませんが、100台以上となると話が変わってきます。というのも、1台のキッティングが完成するのに時間がかかるからです。
例えば、新入社員のための新しいパソコンをキッティングするとしましょう。1人が1台キッティング作業が終わるのが4時間だとすると、1日8時間勤務だとしてしたら2台しかできません。仮に、30日間で100台キッティングするとなると、通常勤務だと60台(2台×30日間)しかできないので、あと40台分の作業時間かもう1人人員が必要となります。
そこで100台以上のデバイスを一気にキッティングするために『クローニング』と呼ばれる方法が必要となります。
BIOS(バイオス)とは
『BIOS』とは、Basic input output systemの略称で、パソコンの大元のプログラムになります。名前の通り、BIOSが無ければwindowsやMacといったOSも起動できませんし、キーボードやマウスの操作もできません。そのためパソコンにとってBIOSは、一番重要なプログラムといえます。
パソコンのキッティングでは、このBIOSのバージョンが古いままだとキッティングに失敗することが多いので必ず確認すべき項目となるでしょう。
クローニングの場合
『クローニング』とは、1つのデバイスの設定を他のデバイスにコピーしてキッティングする方法です。
作業手順は以下の通りに進むことが多いようです。
- 大元のデバイスの設定(マスターイメージ)を作成
- コピー先のデバイスの開梱作業
- マスターイメージをコピー(クローニング)
- ネットワークの設定
- 各種設定
- 資産管理台帳への記入
OSやアプリケーションのインストールが必要なくなるので、100台以上のデバイスをキッティングする必要がある場合、『クローニング』の方が効率的に進みます。
手作業とクローニングのメリット・デメリット
では、手作業と『クローニング』には、それぞれどんなメリット・デメリットがあるのかについて解説します。
手作業のメリット・デメリット
手作業で行う場合のメリットは、手元にデバイスがあればすぐにキッティング作業に着手できる点です。少人数の組織であれば、キッティング作業中の間に使用する代替機もあるはずので、業務がずっと止まることもありません。また後述する『クローニング』の場合、キッティングする機種が多いと、機種の分だけマスターイメージが必要となります。
そのため、キッティングする機種が多い場合は手作業でキッティングするほうが効率的です。手作業のデメリットは担当者本人の力量に左右されるため、属人的な作業に陥りやすくまた品質も一定にならない点です。というのも、キッティング作業は本来の運用業務と並行で行われるため、どうしても人為的ミスが生じる可能性があるからです。また大量のデバイスをキッティングする必要がある場合、徹夜作業になるなど作業者への負担が膨大になる点も注意すべきでしょう。
クローニングのメリット・デメリット
『クローニング』のメリットは、大量のデバイスを一気にキッティングできる点です。
極端な話、『クローニング』はマスターイメージの設定を他のデバイスにコピーするだけなので、品質も均一化されます。大企業で、新入社員達に大量のデバイスを配るなどのケースであれば、『クローニング』の方がいいでしょう。デメリットは、担当者にある程度『クローニング』のスキルが必要となる点です。例えば、Windowsのパソコンを『クローニング』する際は『Sysprep』というキッティング専門のツールの知識が必要となります。
逆を言えば、担当者にSysprepの知識がなければ『クローニング』ができないともいえるでしょう。また、マスターイメージの作成は2週間ぐらい時間がかかる上、キッティングする機種が複数あると機種ごとにマスターイメージを作成する必要があるので手間もかかります。
Sysprep(シスプレップ)とは
『Sysprep』とは、Windowsパソコンに入っている固有の情報を初期化するプログラムです。
そもそも、『クローニング』でWindowsパソコンをキッティングするには、OSのライセンスキーといったデバイスに入っている固有情報を初期化しないといけません。初期化が済んでから、マスターイメージの内容を入れるのですが、初期化の際に使うプログラムが『Sysprep』になります。この初期化のことを、「sysprepを使用して、一般化する」といわれることもあります。
ここでは、それぞれのデバイスに入っている固有の情報を初期化するプログラムと覚えておけばいいでしょう。
自社でキッティング作業をする際の注意点
小規模の組織であれば、自社の情報システム部門でキッティング作業をする場合が多いのですが、自社で行う場合いくつか注意点があります。
1つずつ解説していきます。
担当者の負担が大きい
1点目は、キッティング作業は担当者の負担が大きくなる場合があります。というのも、情報システム部門の業務はキッティングだけではありません。例えば、キッティング作業の他にも自社内の問い合わせ対応(ヘルプデスク)や本来の運用業務も兼任している可能性もあります。また、キッティング作業は時間もかかるため、スケジュール管理が甘いと常に残業することになるでしょう。
担当者の負担を軽減するためには、キッティング作業そのものを外部業者に委託する(アウトソーシング)という選択肢もあります。
品質にバラつきが生じる
2点目は、品質にバラつきが生じることです。キッティングする台数が多いと、1台毎の品質にバラつきが生じる可能性があります。スケジュールがタイトだったり、キッティングするデバイスが多かったりする場合、急いでキッティングを行う必要があるためです。ましてや、手作業でキッティング作業をしていると、どうしても人的ミスが生じる可能性も少なくありません。必要なアプリケーションがインストールできていなかったり、セキュリティ対策が講じられていなかったりすれば、そのリカバリ作業のために余計な工数を割く必要もあります。
自社でキッティング作業をする場合は、品質を均一化することが1つの課題になるでしょう。
セキュリティリスクが高い
3点目は、セキュリティリスクが高い点です。
キッティングしたデバイスのセキュリティ対策が甘いと、個人情報や機密情報が外部に漏れてしまう可能性があるからです。
情報漏えいのケースとしては、コンプライアンス意識に疎い新入社員が、業務に全く関係のないサイトを閲覧したり、ファイルをダウンロードしたりすることによって生じるケースなどがあります。
そのため、
- 外部サイトの閲覧を制限する
- 特定のアプリケーションしか使用できないようにする
- 他部署のサーバーにあるフォルダの閲覧を禁止する
などの情報漏洩に関して対策を講じる必要があります。
一歩間違えれば、会社の信用問題にも関わってくるため、セキュリティ対策は重要です。
キッティング作業をアウトソーシングするメリット
一口にキッティング作業を自社で行うといっても、上記のように様々なリスクがあります。
そのため、最近ではキッティング作業を外部に委託するケースも増えています。
ここでは、キッティング作業を外部へ委託(アウトソーシング)するメリットについて解説します。
担当者が本来の作業に集中できるようになる
1点目のメリットは、キッティング作業をアウトソーシングすることによって、担当者が本来の業務に集中できる点です。ほとんどの情報システム部門は、キッティング作業だけではなく、自社内の問い合わせ対応(ヘルプデスク)なども兼任しています。例えば、キッティング作業に集中して、問い合わせ対応をないがしろにしてしまったら、ユーザーからのクレーム対応に追われます。
逆に、問い合わせ対応だけに集中したらキッティング作業が進まずに、他部署の業務や本来の運用業務に支障をきたすことになるでしょう。ですので、キッティング作業だけでも外部に委託することによって、業務範囲が明確になり本来の業務に集中できるようになります。
品質を均一化できる
2点目は、品質が均一化できる点です。キッティング作業を外部に委託する場合、外部業者によっては『クローニング』の知見があるので、品質のバラつきを抑えることができます。また、外部業者の知見を自社内で吸収できる可能性もあるため、今後のキッティング作業がスムーズにできる可能性もあります。
品質の均一化が課題であれば、外部業者にキッティング作業をアウトソーシングするメリットは大きいといえるでしょう。
IT資産管理が徹底できる
3点目は、外部業者によっては資産管理も請け負ってくれる可能性がある点です。そもそも会社では、新しく買ったパソコンなどのデバイスはIT資産として管理しなければいけません。
IT資産管理とは、
- このデバイスの管理番号は何番なのか
- このデバイスは誰がもっているのか
- このデバイスを購入した時期はいつなのか
といった情報を管理することです。
仮に、購入時期が古いパソコンであれば、最新のOSやセキュリティソフトがインストールできない可能性があります。そのため、購入時期の古いバソコン全てを買い換える必要が生じます。
上記のような資産管理も外部業者が徹底して行ってくれるため、次回以降のキッティング作業のスケジュール管理もしやすくなるでしょう。
キッティング作業をアウトソーシングするデメリット
キッティング作業をアウトソーシングするデメリットは、それなりにお金がかかる点です。しかし、自社内で全てキッティングした結果、品質のバラつきを是正したりセキュリティ対策を施したりするための徹夜作業が増え、人件費が膨大になってしまっては元も子もありません。たしかに、外部業者にアウトソーシングするとお金もかかります。
ですが、実はアウトソーシングのもう一つのメリットとして、膨大になりがちな人件費を一定以下に抑えられるという点があります。
- アウトソーシング費用以上に人件費が増えるのが目に見えている場合
- 外部業者に委託することによって、『クローニング』の知見を取り入れたい場合
- 本来の運用業務に集中したい場合
は、ぜひアウトソーシングを検討してみるといいでしょう。
まとめ
以上、
- キッティングとは何か
- 2つのキッティングの方法とそれぞれのメリット・デメリット
- アウトソーシングするメリット・デメリット
について解説しました。
キッティング作業とは何かわからない方や、今後キッティング作業のアウトソーシングを検討している責任者の方は、ぜひ参考にしてみてください。