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SAPとは?財務から販売管理まで広く扱う特徴や導入形態を広く解説

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ERPや基幹システムと合わせて耳にするSAPについて広く説明しました。2025年の崖など世間で広く話題になっていて、多くの企業を長らく支えてきたSAP。基礎から広く理解したい方にオススメです。

SAPとは基幹システムの一種

ERPパッケージの一種です。販売会社は、ヨーロッパ最大級のソフトウェア会社である「SAP SE」であり、商品名である「SAP」は会社名から取っています。ドイツに拠点を構える「SAP SE」は、2019年において世界190か国で約44万社と取引があり、「ドイツで最も成功した企業」との呼び声もあります。

「SAP」のシステムは、基幹システムと呼ばれる人事・販売・購買など企業のビジネスに欠かせない分野を一元的に管理できるようにしたシステムです。特徴的なのは、各業界に合わせてパッケージ内容を変更している点です。例えば、銀行と食品メーカー、航空会社の3社で比較した場合、それぞれの企業に必要とされる機能は全く違います。

SAPは、欧米企業を中心に各業界に合わせた業務ニーズを把握して、システムの構成や製品作りを行っています。そのため、導入した欧米のほとんどの企業が、カスタマイズをすることなく使っているのが特徴です。

日本でも大企業を中心に、約2,000社が導入しています。多くの日本企業が導入しているSAPのシリーズ商品「SAP ERP」の保証期限が、2025年に切れる(2025年の崖と呼ばれます)とのことで各社対応に追われていましたが、「SAP SE」が2020年2月に、サポート期限を2027年に延長すると発表しました。

「SAP SE」は「SAP ERP」を導入している各社に向けて、次世代型基幹システムと呼ばれる「SAP S/4HANA」への移行を勧めています。
しかし、日本の各企業は「SAP ERP」をオンプレミスで使う選択肢や他のERP製品の乗り換えなど、検討を続けている状態です。

 

SAPを理解するために、ERPを理解する

ERPはEnterprise Resource Planning(企業資源計画)の略語で、「ヒト・モノ・カネの動きを一元管理する」基幹システムを指しています。

ERP誕生前

会社の部署ごとに必要なシステムを1つずつ使っていました。
各部署ごとでの仕事のパフォーマンスを高めるために、個別にシステムを導入するという考え方が強くなっていました。
例えば、経理部であれば会社の業績や日々のお金の動きを記録する経理システム、人事部であれば社員の勤務状況や仕事の査定を行う人事システムと、部署ごとに1つずつ別のシステムを使う形です。尚、社内システムの構成によっては、人事システムをディレクトリサービスであるActiveDirectoryにて代用している企業様もいらっしゃいます。

ERP誕生前のシステム利用例

  • 経理部 → 経理システム
  • 人事部 → 人事システム
  • 事務職 → 受発注システム

部門単独システムの限界

最も大きなデメリットは、部門間のデータ連携が取れていない部分にありました。
部門単独システムの場合、例えば在庫システムと発注システムが連動していないため、社内の在庫数や発注数が即座に把握することができません。

担当者に一点ずつ商品の在庫数を確認するか、在庫データをメールで送ってもらうなど手間が必要でした。
部門単独システムの場合、自分の所属している部署や部門で完結する仕事の効率を上げることができても、部門が複数に渡る仕事の効率は改善されていません。

そうした状況を打破するために、複数の部門のデータ連動や一元化してデータを管理できるシステムが生まれたと言えるでしょう。

SAPを更に詳しく説明

SAPの構成要素

財務会計

会社の業績や経営状態を株主や主要取引先などに公開するためにあります。決算時に作成される貸借対照表や損益計算書などは、金融商品取引法や会社法などの法律により提出が義務化されています。

会社は様々なステークホルダーから構成されています。実際の業務を行う従業員、経営資金を援助する銀行、会社の価値を評価して株を購入している株主など様々です。ステークホルダーに対して会社の経営状況を示すことは、今後の投資や仕事を続けてもらう上で重要な情報であり、企業の果たすべき社会的責任だと言えるでしょう。

特徴 書類 項目 ターゲット
財務会計
  • 法律で経営状態を公開することが義務化

 

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • キャッシュフロー計算書
  • 一般会計
  • 債務管理
  • 固定資産管理
  • 株主
  • 債権者
  • 取引先

 

管理会計

管理会計は、自社の経営状態や業績を知るために作る会計書類です。管理会計には「予算管理」と「原価管理」の2種類がありますが、共に「ヒト・モノ・カネ」といった、会社の事業を続けて行くうえで必要な要素に、どのくらいのコストが発生し、今後どのくらい必要なのかを知るための書類です。

財務会計と異なり、法律で作成や提出の義務は定められていないため、特にフォーマットは決まっておらず、なかには管理会計を行っていない企業もあります。管理会計の提出義務はありませんが、自社の経営状態を把握するためにも作成することをおすすめします。経営状態を正しく把握できていないと、正しいタイミングで適切な施策や資金投入を行なえません。例えば、売上が悪い時に新しい人材や設備を購入しても、コストが発生するだけですぐに売り上げに直結するとは言えないでしょう。

一方で売上が良い時期であれば、新たな設備の導入や新たな商品・事業の開発を行うことができる、良いタイミングだと言えるでしょう。たとえ最初は上手くいかなくても、計画以上の売上が続けば、失敗した分のコストを補填できる目途が立つからです。また、新しい商品や事業を始めなくても、現在働いている従業員の給料に還元したり、設備のランニングコストに回したりと、使い道は様々です。

逆に売上の状態が悪ければ、現在売り上げが好調な業界や顧客に集中して営業活動を行なったり、売上が伸びている自社商品の製造を優先したりするなど、業績を回復させるための施策を打つことができます。

特徴 作成書類 メリット ターゲット 備考
予算管理
  • 売上・経費・予算が、予想や目標に対してどのような進捗か管理すること
  • 事業計画書
  • 中期経営計画書

 

  • 業績状況の把握
  • コストカット
  • 新たな事業や施策への参考
  • 経営層

 

  • 書類のフォーマットは特別ない
  • 管理会計書類を作成する義務はない

 

 

原価管理
  • 原材料費(仕入価格・工場での商品製造費)
  • 人件費(給料・賞与・採用など)
  • 設備費(社内設備)

販売管理

販売管理は、モノとカネの動きを管理する重要な機能です。「どの顧客に商品をいくらで販売したか」や「販売した売上金額が正しく入金されているか」など、企業の事業の根本に関わってくる部分になります。

まず得意先関連に関しては、過去の販売実績や見積書のデータが詰まっています。「A社での成功実績をB社やC社で応用できないか」といったアイデアや「強みがある特定の商品を他の顧客に売り込めないか」など、今後の売上を伸ばしていくための重要な材料です。

また、担当者の変更があった際には、求められた書類を正しく提出することや業務への支障を防ぐためにも、過去の販売実績や見積書のデータは非常に重要な資産だと言えるでしょう。

次に受発注データに関しては、商品の仕入れと納入に関わります。「A商品はどこからいくらで仕入れていたか」や「B社への伝票発行や納品先」などの、データを閲覧することが可能です。
素早く発注すべき商品と仕入先がわかることで、業務の効率化につながります。そして、納品先も一緒に明記できるので、発送作業や伝票処理もスムーズに行うことが可能です。入社して間もない新人の方でも、すぐに業務に慣れることができるでしょう。

最後は、取引先との契約など契約管理に関してです。取引先から契約に関しての書類の提出を求められた際に、過去の提出書類を見返すことで記入すべき内容がわかるようになります。また、トラブルや特殊な事例が起こった際に、契約書に基づいて対応することで、影響を最小化することができるでしょう。

内容 機能内容 業務
得意先関連
  • 商品別販売実績
  • 見積書データ

 

  • 営業マンの販売戦略
  • 成功事例の横展開
  • 担当変更の引継ぎ資料作成

 

 

受発注
  • 仕入商品&仕入先データ
  • 伝票発行
  • 納品先の確認
契約形態
  • 顧客や仕入先との契約データ
  • 取引先からの提出書類作成
  • 有事の際のエビデンス

在庫購買管理

  • コストカット
  • 欠品や納期遅延の防止
  • 経営の透明化

在庫購買管理は在庫や発注数だけでなく、生産計画や売上にも関わるなど該当範囲が広範囲に渡るのが特徴です。例えば、車メーカーであれば、車を作るために必要な部品の確保や作業工程に使う工具や機械の購入などが該当します。また、工程の一部分を外注委託している場合は、引き渡しから完成までの納期の試算なども含まれるでしょう。

メリットとして考えられるのは、主に3つです。

1つ目にコストカットですが、在庫と発注数を一元管理することで「必要な部品を必要な量だけ」確保することができます。社内に在庫がたくさんある部品を、発注する必要がありません。余分な在庫やコストを生むだけだからです。また、該当部品の仕入先データもしっかりと管理しておくことで、適正な価格での仕入れを行うことが可能です。

2つめは、欠品や納期遅延の防止です。特にメーカーは年間で生産計画を策定しており、生産計画に基づいて売上や経費などを試算しています。予定通りに商品が作れないと会社の経営に大きな影響を及ぼすことになります。特に長納期部品は入手までに時間がかかるため、欠品や納期遅延に繋がりやすく、営業や調達担当者を中心に情報を集め、想定納期よりも余裕を見て発注することが大切です。

3つめは経営の透明化です。先ほども少し触れましたが、生産実績や生産計画に基づいて、会社の売上や経費を予測して経営方針を立てています。新たな商品の開発や事業の立ち上げなどにも関わってくることなので、購買管理を適切に行うことは、非常に大事な業務の1つと言えるでしょう。

項目 期待される業務 メリット
在庫購買管理
  • 自社内の商品在庫管理・発注数試算
  • 在庫ロスと発注過多を防ぐ
  • コストカット
  • 欠品や生産停止を防ぐ
  • 経営の透明化
  • 生産計画の予測と策定
  • 必要な原材料の試算と長納期部品の確保
  • 売上目標の策定
  • 次期以降の事業計画や必要なコストを試算
  • 仕入先の管理
  • 適正な価格での仕入れや不正を防ぐ

SAPを導入する

パッケージ

SAPと他社のERPパッケージの違いは、企業ごとに異なるニーズや業務プロセスを意識して製品を作っている点にあります。例えば、銀行や航空会社、農業関連の企業では求めている機能も全く異なるでしょう。SAPでは業種に合わせた構成をしているため、購入後のギャップやトラブルが起きにくくなっています。

業種 業務内容 業務例
銀行
  • リテールバンキング業務
  • デジタルカスタマーエンゲージメント
  • 財務とリスク
  • カード管理
  • 顧客表示の一元化
  • 会計管理と決算処理

 

 

商社
  • 調達・購買
  • サプライチェーン
  • 販売
  • 請求書・買掛金管理
  • 輸送・倉庫管理
  • 販売実績管理
電力・公益事業
  • エンタープライズ設備資産管理
  • メータリング
  • 請求から入金まで
  • 設備資産の運用と保全
  • メーター読み取りとエネルギーデータ管理
  • エネルギー/水/サービスの請求と収益管理

アドオンとなるABAP

アバップと呼ばれるABAP(Advanced Business Application Programming)とは、SAPの製品に付いてない機能を追加(アドオン)する際に用いられるプログラミング言語です。ABAPはSAP以外の製品には利用しません。そのためABAPは、Javaや.NET C#などと比較すると知名度が低く、ABAPが理解できるエンジニアは貴重だとされています。ABAPのアドオン内容は下記の3種類に分けることが可能です。

レポート

ABAPのレポートプログラムは、データを取得し出力のためのプログラムです。会計業務での利用が多く、会社の業績に関わる財務諸表の作成などに利用されています。

パッチインプット

バッチインプットは、バッチ処理と呼ばれる大量のデータを処理することを指します。主に即時性のデータが低い場面で活用されており、例えば、Amazonの物流センターやコンビニの在庫処理など、多くのデータ処理が必要な場所で利用されています。

メリットは、コンピュータープログラムが大量のデータ処理を自動で行ってくれるため、人為的なミスが発生しない点にあります。また、データ処理に時間や場所を問わない点も魅力です。処理手順や処理時間を設定しておくことが可能であるため、業務が終わっている夜間でも処理を行うことができます。

Dynpro(ディンプロ)

ディンプロと呼ばれるDynproは(Dynamic programming)の略で、GoogleやYahoo!といった検索エンジンなどで、こちらの指示に対して画面が変わっていく様子のことを指します。画面を通じて対話しているように展開していくため、「対話型の画面入力プログラム」と、呼ばれています。レポートやパッチインプットと比べると難易度が高いプログラムで、実際の業務でこなせるエンジニアの人材はかなり少ないと言われています。

カスタマイズ

SAPのカスタマイズは、SAPシリーズのERPパッケージを企業が使いやすいように独自のシステムや機能に変更を加えることです。アドオンとの違いは、アドオンがERPパッケージに不足している機能を「加えるだけ」なのに対し、カスタマイズは「自社専用にシステム変更や独自機能を付け加えること」になります。

ただしカスタマイズはデメリットも大きく、コストが相当かかります。追加で取得するソフトのライセンス費用や導入時のサポート費など、数百万~数千万かかることも珍しくありません。そして、SAPの特徴であった業種ごとの業務を想定して構成したとの良さも消すことになります。SAPはできるだけカスタマイズせず、そのまま利用することを想定しているからです。もし、カスタマイズの自由度だけを求めるのであれば、SAPにこだわる必要はありません。