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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?事例や課題を解説!

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経済産業省が言及した事をきっかけに、昨今急激に提唱され始めたデジタルトランスフォーメーション。今まさに必要な企業変革として注目を集めていますが、その実態としての課題や事例について解説しました。是非ご覧ください。

DXとは

デジタルトランスフォーメーション(Digital transformation; DX)は、IT環境や技術の進歩によって、人々の生活をより便利に豊かにしていくことが目的とされる概念です。企業レベルで見ると、テクノロジーを活用することで、経営のあり方や事業のあり方、また働き方変革する事を意味します。

デジタルトランスフォーメーションを実現し、革新的な技術やサービスを用いた製品やサービス、ビジネスモデルが新たに誕生することで、既存市場を破壊するくらいの大きなインパクトを市場に与えることが期待されています。例えば、顔認証によるATM利用を実現したセブン銀行などは、デジタルトランスフォーメーションの成功例と言えるでしょう。

消費者が既存製品やサービスに抱いていた価値や評価が変化するため、各企業が既存のビジネスモデルや新事業開発強化に一層力を入れ、企業間での競争力が激化することが期待できます。

略さずにいうとデジタルトランスフォーメーション

英語で書く(Digital Transformation; DX)は、英語圏で「transformation」の部分の接頭辞「trans」を「X」と表現するため、「DT」ではなく「DX]と略しています。

デジタライゼーションとの違い

デジタイゼーションともいいますが、デジタライゼーションは主にコスト改善の面で貢献する場合に使われます。基本的には効率化や合理化、システム導入による付加価値の恩恵を受けて、ビジネスプロセスを変革する。そしてその際にコスト削減を実現するケースで主に使われます。

dxが推進される背景

経済産業省が提唱した2025年の崖

企業で現在活用している既存システムを使い続けた場合、2025年以降に毎年10兆円以上の経済損失の可能性があると、各企業に警鐘を鳴らしているレポートです。
ポイントは3点になります。老朽化した既存システムを使い続けることによって市場のニーズやビジネスモデルの変化に対応できない点、
システムの維持費にかかるランニングコストの増大、システムに精通した人物の不在によるセキュリティリスクの高まりです。

経済産業省が発表したレポート

2018年9月に発表したレポート「DXレポート」で、2025年の崖や現状の課題、対応策などに触れています。

DXを推進する施策

DXを推進する施策として、現状利用しているITシステムのコストカット内容とTシステム全体の見える化、評価体制の構築について、まとめました。

ITシステムのコストカット及びリスク低減が主

実施内容 対応策 メリット
システムの枠組みの策定
  • ビジネスモデルの変化にも対応
  • ステークホルダー内での目標設定の共有と明確化
  • システムの効率化
  • 必要な機能の選定
廃棄の重要性を認識
  • 余分な機能の削除
  • ランニングコスト、初期投資でのコストカット
マイクロサービス
  • 独立した複数の小さなサービスを組み合わせて、1つのアプリに集合化
  • 機能の追加や変更などが行いやすい
  • 新たな技術取得がしやすい
  • システム障害による影響を最小限に抑える

ITシステム全体の見える化、評価体制の構築

構成案 実施内容 期待している結果
ITシステムの現状の把握
  • サーバー構成やライセンス使用状況確認、メンテナンス費用の試算
  • ソフトウェアやシステム運用の状況確認
  • 企業内のシステム・データの活用確認
  • 技術的負債とメンテナンスコストの明確化
  • 新システムに必要な機能の選定材料、改善点の明確化
  • 連携を取るべきデータの精査、投資箇所の明確化

 

DX推進システムガイドラインの構成と管理
  • 経営戦略におけるDXの位置づけと関係の明確化
  • DXを実行するための体制が整っているか確認
  • 自社に最適な提案を自ら判断できる能力育成
  • 実行プロセスの状況管理
  • DXの実現
  • 変化するビジネスモデルや市場ニーズに対応
  • 企業文化の改革

 

DXを実現する上で存在する課題

既存システムのレガシー化

企業の業務の根幹を支える既存の基幹システムは、長期にわたって企業の業務を支えてきました。
多少な不都合があってもシステムを一新できない理由は、下記にあります。

  1. 業務を止めるリスク回避
  2. 初期投資やランニングコストが発生
  3. システム知識の継承

順番にみていきましょう。

業務を止めるリスク回避

企業側は既存の基幹システムを問題なく活用できている間は、新たなシステムの導入へは消極的です。基幹システムは、受発注や購買管理、財務管理など多岐に渡って企業の日々の業務を支えているためです。仮にシステムダウンしてしまった場合、顧客への納品物の発送や伝票処理、仕入れ先への発注作業など、全ての業務がストップしてしまいます。取引先へ迷惑をかけるだけでなく、経済的な損失も大きいため、問題なくシステムが稼働している間は、そのまま活用したいと思っている経営者も多くいるでしょう。

また新たに基幹システムを導入する場合、新システムと並行しながら既存システムを使う形になります。できるだけ早くスムーズな形で新システムに切り替えないといけません。バグや不具合などをチェックしながら短期間での導入を求められるため、新規システムをスムーズに導入することは、かなり難易度が高いミッションだということがわかります。

初期投資やランニングコストが発生

初期投資として数百万から数千万円必要です。一から開発するスクラッチ開発よりも安価で済む、既存製品を利用するパッケージ型でも数百万円はかかります。

売上が好調な時期であれば、システムの導入にも前向きに検討できますが、売上が伸び悩んでいる時期であれば、優先度は下がるでしょう。売上が苦しい時期に、売上に直結しない新システムの導入に前向きに検討できる経営者が、どのくらいいるでしょうか。そう多くはないことが予想できます。

そして、オンプレミスと呼ばれる自社内でネットインフラの整備や運用をする場合、毎月の維持費がランニングコストとして発生します。大きな金額を伴う投資ですので、企業が新システムの導入に慎重な理由もわかります。

こちらのページもご覧ください。クラウドサービスで利用されていないサービスやIDの特定方法をご紹介します。

システム知識の継承

基幹システムの管理者には、ITやシステムに関して精通している人物が望ましいです。データの復旧時や機能の追加・変更時の対応など、知識や技術が無い人では対応ができません。企業側も知識や経験が豊富な社員にシステム管理を任命したいところでしょう。

しかし、若い社員の採用数が少ない、社員の入れ替わりが激しいといった、企業の場合は引継ぎが上手く進みません。時間の経過と共にシステムに精通した人がいなくなると、「どの機能を残すべきか」や「各部門の連携すべき対象」など、社員にとって満足度が高い形でシステムを導入することが難しくなります。

ペーパーレスが進んでいない、既存の業務体制

紙で保存することが優先されている企業が多いのが現状です。しかし、ペーパーレス化を促進するためには課題をクリアすることが必要になります。

  1. ペーパーレス化導入の意義の理解
  2. ICT環境の整備
  3. BCP対策
  4. 取引先への周知

一つずつみていきましょう。

ペーパーレス化導入の意義の理解

企業の管理職や経営層が「書類=紙」との、意識が変わらない限り難しいでしょう。会社で行う施策に関して決定権を持っているのは、立場が上の経営層だからです。一般社員がいくら「ペーパーレス化のメリットや導入意義」を唱えても、立場が上の管理職や経営層に響かなければ、何も変わりません。

ペーパーレス化によって、日々発生している印刷代や紙の購入費のコストカット、書類を探す手間の省略、在宅勤務やテレワークの実現による優秀な人材流出の防止など、ペーパーレス化の促進によって多大なメリットがあることを経営層が理解しなければなりません。

ICT環境の整備

ICTは、(Information and Communication Technology)の略語になります。ここでは、社外でPCやスマートフォンを使えるようなネットワーク環境の整備、オンライン会議を行うツールの導入に関して触れます。

ICT環境の整備はメリットも多いのですが、初期投資が数十万円~数百万円必要です。企業の経営状態や時代の流れを見極めて、経営者がコストよりもICT環境を整備することで得られるメリットを感じることが求められます。メリットに関しては下記になります。

  • 働き方の多様化
  • 優秀な人材の流出防止
  • 業務の効率化

大きいメリットは必ずしもオフィスに出社する必要がなくなり、時間と場所の制約を受けない働き方が実現できる点です。在宅勤務やサテライトオフィスなどの勤務が可能になり、これまで出産や結婚によって退職を選んでいた女性たちに、新たな選択肢を提示することができるでしょう。社員にとっては仕事を継続できる可能性が増え、企業にとっては優秀な人材を防げるといったメリットがあります。

そして、業務の効率化に関しては空き時間を有効に活用することができます。顧客との商談が多い営業マンであれば、空いた時間で必要な事務処理や書類作成を行うことが可能です。

さらに、現在推進しているオンライン会議のツールを導入することで、どこにいても顧客との商談を行うことができます。移動時間や費用のコストカットだけでなく、顧客との商談回数増加による売上増加にも期待をすることができるでしょう。

BCP対策

災害やシステムダウン時でのデータのバックアップ体制を万全にすることが求められます。紙ベースでの保存であれば、災害や盗難をされない限りは、オフィス内に管理しておけば問題が起きませんでした。

しかし、電子データに保存する場合、システムダウンやサイバー攻撃など、紙ベースでの保存よりもデータ流出の可能性が高くなります。ユーザー情報やコンピューターリソースを一元管理できるActiveDirectoryの導入やPC上にデータを残さないシンクライアントなど方法はあるので、セキュリティリスクを万全にしておくことが重要でしょう。

取引先との調整

最後は取引先との調整です。企業は取引先なしでビジネスを行っていくことはできません。取引先から求められる提出書類が紙ベースでの書類が多い場合、ペーパーレスを決断していくことは、なかなか難しいでしょう。一部の書類を電子データで提出したり、期限を決めて段階的に移行していくことで、取引先の手間を最小限にすることが必要でしょう。

DXが実現された事例

鹿児島銀行

キャッシュレスアプリ「Payどん」を2019年に開発しました。特徴的なのは地域振興をテーマに、独自のキャッシュレス決済アプリを開発した点にあります。「Payどん」の開発背景には、完全キャッシュレス商業施設「よかど鹿児島」のオープンをきっかけに、最新のテクノロジーを通して地域を活性化させたいという、鹿児島銀行の思いがありました。

「よかど鹿児島」には、鹿児島の黒豚を使ったお好み焼きやラーメンなどの飲食店や屋久島の特産品ショップなどを取り揃え、地産地消で地域にお金を落とすことを目的としています。施設全体を完全キャッシュレスにすることで、県外や外国人の訪問者を取り込む狙いもありました。

「Payどん」の評判ですが、結果は上々です。クレジットカード決済が50%に対し「Payどん」の利用は25%ですが、特に50代-60代の利用者からの反響が大きく、「よかど鹿児島」で初めてキャッシュレス決済を利用した方も多かったとの結果を得ています。テレビ局からも取材されるなど注目度は高まっており、今後の更なる浸透にも期待できるでしょう。

アマゾン

アマゾンは、デジタルトランスフォーメーションを体現し、最も成功した企業の1つと言えるでしょう。日本でも生活に密着しているECサイトでのネットショッピングを皮切りに、電子書籍Kindle、音楽や動画、書籍など様々な利用シーンができるアマゾンプライムなど、次々に新たなビジネスモデルを打ち出しています。

成功の要因は、アマゾンが大事にしているCX(顧客体験)にありました。既存サービスでの顧客の好みや傾向をデータ収集して分析することで、現在サービス化されていない事業のアイデアに生かしています。それに加え、映像や書籍のデジタル配信は物流が不要であるため、低コストでの運営が可能です。ユーザーが増えれば増えるほど利益が上がるという、好循環が望めるビジネスモデルです。

DXを実現するためのガイドライン

DX推進指標

2019年に経済産業省が公開した「DX推進指標」に、企業の経営層が事業部門、IT部門などに関わる社員たちと協力しながら、DXを推進する仕組みやITシステムに関して回答していく形になります。

DX推進指標の狙いは、企業文化の変化や新たなビジネスの創出です。
現状はシステムの老朽化や社内システムに精通している人がいないため、新しいデジタル技術を導入しても、システムを満足に活用できていません。

既存のシステムをそのままにしていても、運用や維持にかかるランニングコストの増大やシステムの脆弱性を突かれたセキュリティリスクなど、
不安材料も多いです。

そうした状況を踏まえ、経済産業省は2021年~2025年をシステムを新しくする集中期間と位置づけ、段階を踏んだ新規システムの導入やクラウド・情報・ソーシャルといった分野の活用を一層企業に求めています。

各企業がDXを推進していくことで、新たなビジネス、製品、サービスの出現に経済産業省は期待しており、2030年には130兆円以上のGDPの押上げを目標としています。