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働き方改革とは?背景から課題、関連法や助成金まで広く解説しました

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働き方改革は、一朝一夕に完結できるものではなく、複数年にかけて、複数の法改正を行い、徐々に浸透させていくこととなりました。この記事ではその背景や関連法案の説明は勿論、実現方法や実現する上で申請可能な助成金など様々な観点から働き方改革を解説します。


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働き方改革とは?

出生率の低下が叫ばれ、2019年には統計開始後、初めて出生者数が90万人を下回りました。この状況が続けば、社会保障制度の破綻や労働生産性の更なる悪化が止む無しの状態となっていまいます。それを回避するために、潜在労働力と化している女性や高年齢者にフォーカスをあて、皆が活躍できる場の提供を目的とした改革を断行することとなりました。それが働き方改革です。

働き方改革の背景

これまでの日本人・日本企業の働き方は長時間労働に大きく依存してきました。しながらその結果は、生産性のある労働には結びついていませんでした。内閣府によると日本は労働時間の割に生産性が低いと言う統計も出ています。より細かく見ると、週49時間以上働く男性の労働者の割合は韓国を除けば先進国で一番高いという事実があります。

働き方改革とは安倍政権が目指している政策の1つです。日本の経済再生のために働き方を見直して生産性を上げるための施策です。政権がこのような課題に取り組んだのは日本の労働人口(15歳 – 64歳)が急激に減少しているという事実に直面してるからです。ただでさえ、生産性の低い日本人の労働形態で人口まで急激に減少していきます。例え、政府が人口増加に取り組んだところで、人口が短期間で増える事はあり得ません。

こうなると日本の経済が再生する可能性は極めて低いでしょう。この事態を避けるには労働人口を増やす、生産性を上げるなどの施策が必要です。多くの人に働いてもらうには、それぞれの生活に合った働き方を認める必要があります。政府は様々な働き方を認める雇用形態や女性の社会進出、格差の是正等を目指すことで労働人口を増やしていこうと言う計画を立てています。

首相官邸の言葉を借りれば、「一億総活躍社会」を目指しています。これまでの日本企業の働き方を大きく見直し、生産性を向上していくことで1億人が活躍できる社会につながっていくと政府は考えています。このような背景の中から働き方改革を推進する流れが出てきたのです。

働き方改革関連法

働き方改革関連法は正式には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」と言います。2018年5月、6月に衆議院、参議院で可決されました。翌年の4月より順次施行されています。

政府によれば、働き方改革関連法のポイントは以下の3つです。

  1. 長時間労働の是正
  2. 多様で柔軟な働き方の実現
  3. 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保のための措置

働き方改革関連法のポイント詳細の説明

長時間労働の是正

この法律により労働時間の上限が設定されています。一ヶ月に45時間、年間でも360時間までという時間外労働時間の上限が設定されています。例外的に特別な事情がある場合は、年間720時間、月100時間未満の時間外労働時間が認められています。これは休日出勤込みの労働時間です。また、この場合でも複数月の平均時間外労働時間は80時間を超えないように設定されています。

多様で柔軟な働き方の実現

年次有給休暇を一定数は確実に取得できるように義務づけられました。具体的には、年間10日以上の権利を持つ労働者に5日は時季を指定して有給を与える義務が企業側に発生しています。フレックスタイムでの働き方もより柔軟な働き方ができるようになりました。精算期間がこれまでの1ヵ月から3ヶ月に延長されています。一方で、高いスキルや専門知識を持ち、この高額な年収を受ける労働者は時間外労働の上限の対象外となる制度(高度プロフェッショナル制度)も設定されています。これは年間104日の休日を保証することや医師の指導を受けさせることなど一定の条件があります。このように幅広い働き方の選択肢が法律により認められるようになっています。

雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保のための措置

これは正社員と派遣社員などの有期雇用労働者の待遇を是正する措置です。簡単に言えば、同じ仕事をしていれば正社員であろうが、派遣社員であろうが、同じ賃金を払わなければいけないといった趣旨です。賃金は仕事に対して発生すると言うことになります。また、正社員との待遇に格差が存在する場合は、この待遇差の理由や内容を説明することを企業に義務化しています。

働き方改革における罰則

この法律には罰則規定も設けられています。時長時間労働のところで述べた時間外労働時間の上限を超えた場合、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が企業に課されます。ここでは労働基準法違反としての刑事罰での罰則という形で課されます。時間外労働時間では割増賃金 (1.25倍)が支払われますが、月60時間を超える残業の場合はこれが1.5倍になります。残業代を支払わない場合もまた刑事罰として同様の罰則の対象となります。

またフレックスタイムの精算期間の延長も上で述べました。精算期間が1ヵ月を超える場合は届け出が義務化されています。これを破った場合は罰則対象「30万円以下の罰金」が課されます。年次有給休暇についても罰則が規定されています。企業側が従業員に法律で定める最低日数の有給休暇を与えなかった場合は刑事罰「30万円以下の罰金」の対象となります。

プロフェッショナル制度の導入により、対象となる労働者が長時間労働で健康を害さないよう医師の指導が義務化されました。この義務に企業側が違反した場合、刑事罰「50万円以下の罰金」が課されます。このように働き方関連法は従業員の労働時間や健康を守るために厳しい罰則規定を設けて企業側にこの法律の遵守を義務づけています。

働き方改革推進における支援助成金

働き方改革推進支援助成金とは厚生労働省が実施している助成金です。様々な方法で労働環境の改善に取り組む企業を支援するための助成金制度です。下記の通り全部で5つの助成金があります。ここでは中小企業向けに設置されたコースに絞ってご説明致します。

  1. 労働時間短縮・年休促進支援コース
  2. 職場意識改善特例コース
  3. 勤務間インターバルコース
  4. 団体推進コース
  5. テレワークコース

働き方改革推進における支援助成金の詳細説明

労働時間短縮・年休促進支援コース

中有小企業の事業主が従業員の労働時間を短縮させたり、有給の取りやすい環境を企業が整える場合に申請が可能です。支給対象は以下の10の取組です。

  1. 労務担当者への研修
  2. 労働者への研修
  3. 外部専門家によるコンサル
  4. 就業規則・労使協定等の作成・変更
  5. 人材確保の取り組み
  6. 労務管理ソフトの導入・更新
  7. 労務管理医療機器の導入・更新
  8. デジタル式運行記録計の導入・更新
  9. テレワーク用通信機器の導入・更新
  10. 労働効率を向上させる設備機器の導入・更新
申請基準

中小企業の事業主は以下の4つのうち1つ以上を選び達成を目指すことが条件となっています。

  1. 36協定に基づき、時間外労働時間を縮減させること
  2. 週休二日制を目指し、所定休日を1日から4日以上増やすこと。また、規定後一ヶ月間に実績があること。
  3. 特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇)のうち、新たに1つ以上の導入を行うこと。
  4. 時間単位の年次有給休暇規定の導入

支給額は成果目標額内で、取り組みにかかった費用の3/4に対し助成金が支払われます。支給額の上限は達成基準ごとに異なります。例えば、上記4つの目標を設定した場合、それぞれの目標に対する上限額の合計が助成金の支給上限額となります。

職場意識改善特例コース

この制度はCOVID-19に関わる病欠休暇やお子さんの休校・休園に対する特別休暇制度を中小企業の事業主が整備するのを支援するものです。

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実施期間

2020年2月17日~7月31日までに実施する必要があります。申込締め切りは7月29日。

支給額

かかった経費の合計金額の75%、または一企業あたり50万円の上限額のうち低い方が支払われます。

勤務間インターバルコース

これは雇用主が労働者の勤務終了から次の勤務までの時間を就業規則に規定することです。例えば、月曜日9時から17時まで仕事の場合、火曜日はまた9時から出社など。これにより従業員の生活時間や睡眠時間の確保ができます。

申請基準

中小企業の事業主は以下の目標の達成を目指す必要があります。

  1. 事業主が勤務間インターバルを新規導入すること。9時間以上11時間 or 11時間以上のインターバル
  2. 勤務間インターバルを従業員の半数以下に9時間以上適用している事業場は適用範囲が半数を超える従業員に拡大すること。
  3. 勤務間インターバルが9時間未満の事業場については半数を超える従業員に対し2時間延長し、9時間以上にすること。
支給額

上記に掲げた目標の達成に応じて、助成金が支払われます。

働き方改革の課題

働き方改革を実現していくためには大きく分けて2つの課題があります。

  1. 残業などの長時間労働
  2. 有給取得率の悪さ

残業などの長時間労働

昨日冒頭でも述べましたが日本のこれまでの働き方は長時間労働に大きく依存してきました。この状態を改善するために働き方改革で罰則付きの規定が設けられたわけです。長時間労働を減らすことにより短期的には問題点を発見されます。長時間労働に上限が設けられても、従業員側の仕事量が減るわけではありません。

また、働く時間が減ったことで企業側の収入が減ってしまっては元も子もありません。長時間労働を減らすためには、今までの働き方の質そのものを見直す必要があります。また現場主導で長時間労働現象を指示しても、これまで働き方を短時間で変えられるほど人間は単純ではありません。この目標達成のためには、経営のトップが必達の課題として指示する必要があります。

有給取得率の悪さ

有給取得率の低さを改善することも働き方改革の大きな課題です。これも現場主導で任せてはいけません。経営のトップがある程度強制力を持って指導しないと浸透は難しいでしょう。有給取得させることによるメリットはたくさんあります。従業員の生産性が向上し、健康面での問題も減ります。企業のイメージも向上するため、優秀な人材も集まりやすくなります。従業員の仕事へのやる気が高まり、仕事の生産性も向上していきます。この目標を達成することによって企業にプラスのサイクルができていきます。

働き方改革を実現・導入する

企業が働き方改革を実施することで生産性の向上に努めます。ここでは働き方改革を導入の行方やガイドライン、そして実際の企業での実例などをご紹介していきます。

働き方改革の施策内容

働き方改革をするにあたり厚生労働省はガイドラインを発表しています。強調されていることは2点で、労働時間の短縮に取り組むことと、雇用形態に囚われない待遇を確保することです。詳しくは後に「ガイドライン」の項目で解説いたします。

以下のような施策に取り組むことにより、効率的な働き方を実施していきます。

働き方改革の施策①:副業やパート

長時間労働が減ることで、副業やパートの時間が確保できます。日本全体の労働人口増やす事は短期間にはできません。

そうであれば、副業解禁することで、優秀な人材は他の企業でも活躍できます。残業代減少分はこの副業で補えますし、企業の人材不足もこの副業によって補えます。

働き方改革の施策②:女性の活躍推進、育児との両立

書き方改革に女性従業員の活躍は必須です。しかしこれまでは女性の労働者が様々な制限と戦ってきました。1番大きな問題が出産と育児の両立でしょう。この時期に一旦キャリアを中断せざるを得得ませんでした。これまでの男性と同じ働き方を求めてては、限られた女性しか働き続けることができません。幅広い、柔軟な働き方を企業側が認めていくことで、出産・育児との両立ができる女性労働者が増えていきます。

働き方改革の施策③:障害者雇用

障害者の雇用については障害者雇用促進法により企業側に一定比率での障害者雇用が義務付けられています。この法定雇用率が2018年からの5年間で段階的に引き上げられます。この障害者の雇用については会社側の理解や、一緒に働く部署の方々の理解が必要です。特に社会全体として仕事の生産性を高めることにフォーカスが行っています。従い、障害者の雇用が生産性の低下につながるのではないかと言う従業員側の不安を会社側が取り払う取り組みが求められます。

働き方改革の施策④:在宅勤務

子持ちのご家庭やご両親の介護が必要な過程等の様々な事情で自宅にいなければいけない方にとって、在宅勤務やテレワークなど社外から業務を行う事は非常に有意義な働き方です。また、そうでない方々にとっても日々の通勤時間がなくなり、この時間を有効に使えます。

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働き方改革を導入する際のガイドライン

働き方改革を実施する場合は政府によって出されたガイドラインを参照することをお勧めします。厚生労働省がウェブサイトでガイドラインを発表しています。ガイドラインのポイントは大きく3つです。労働時間法制を見直すこと、公正な待遇を確保すること、柔軟な働き方がしやすい環境整備することなどです。

労働時間

  1.  残業時間に上限を設ける
  2. 「勤務間インターバル」制度の導入
  3. 年間最低5日の有給休暇を企業に義務付け
  4. 残業時間(60時間超/月)の割増賃金引き上げ
  5. 企業が労働時間を客観的に把握することを義務付ける
  6. 「フレックスタイム制」の拡充

公正な待遇確保

  1. 不合理な待遇格差をなくすための規定を整備する
  2. 企業の労働者に対する待遇への説明義務の強化
  3. 行政による企業への助言・指導、裁判外紛争解決手続きに関する規定の整備

柔軟な働き方がしやすい環境整備

  1. 柔軟な働き方に関する検討会の実施
  2. 雇用類似の働き方に関する検討会の実施
  3. テレワーク普及促進関連事業の実施
  4. 情報通信機器を利用して自宅などで仕事をしている方へ(在宅ワーク)のガイドラインの改定
  5. 副業・兼業のガイドライン改定

働き方改革を実現した事例

ここではいくつかの企業の働き方改革の実例をご紹介します。

働き方改革の実例:ローソン

同社はダイバーシティを戦略の1つと位置づけています。担当役員を配置し、不要な制度設計や運用を行っています。女性社員の雇用だけでなく、障害者の雇用も積極的に行っており、グループ全体で2.24%の障害者雇用率となっています。また、外国人労働者の雇用にも積極的で、現在100名以上が雇用されています。

労使協議の場の活用

同社では、従業員満足を高めることにより、その能力を存分に発揮できると考えています。そのため、働きやすい職場を作るための徹底した話し合いを行うための労使直接話し合う場を設けています。社員の就労環境や業務の効率向上について話し合うことで、様々な人材がキャリアを磨き、成長することで、企業も持続的に成長することが出来ると考えています。

ダイバーシティ対話大会の実施

社員全員がダイバーシティについて知識を得ること、認めること、それを価値に変えるにはどうすればよいのかを考えるための対話大会を全国で行っています。管理職も一般職も一緒になって対話し考えることで、働きやすい職場づくりを考えています。この大会により、多様な人材をいかに活用するか、管理職にとっても人材マネジメントの観点からも大いに参考になっているようです。

全社員への意識調査

毎年年1回、全社員に対して仕事や生活の意識調査を行い、社員の本音を引き出し、その調査結果をもとに部門ごとにカルテを作り、職場の環境や管理の在り方を改善するためのフィードバックを行っています。また、会社としての施策や制度の改善検討にも活用しています。

 

働き方改革の実例:ロイヤルホールディングス

大手ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」を経営するロイヤルホールディングスはファミレス業界では常識の24時間営業や年中無休に切り込みました。2017年には24時間営業店をなくし、6年には年中無休もなくしました。営業時間、日数だけでなく、POSレジの導入や掃除ロボットの導入などの業務効率化を図るなど、労働環境の改善に取り組みました。

2017-18年は来客数こそ減少したものの、コアタイムの売り上げを伸ばすことに成功。客単価の向上にも成功し、2年連続で売上が前年を上回りました。

多様な人材育成策

同社では、社員一人一人が持つ能力を最大限に発揮することで、仕事も私生活も充実できると考えています。そのため、「なりたい自分」になれるような具体的でユニークな研修制度や支援制度を設けています。入社後の集合研修や、各部門で行う業務に則した実務研修の他に、社員の持つ資格や経験、能力に応じて適材適所の人身配置を行う「タレントマネジメントシステム」や、人生のイベントが発生する年齢の社員に対して生活設計やマネープランなどに関するセミナーを開催する「ライフプランセミナー」を実施するなど、多様な人材育成策を講じています。

ダイバーシティへの取り組み

同社では、様々な人材が多様性のある働き方が可能になるよう、既存の制度の見直し、改善プロジェクトの立ち上げなどをグループ全体で取り組んでいます。例えば、60歳以降の社員がその経験を活かして若手や次世代社員をサポートするシニア社員制度、外国籍社員による外国語によるマニュアルの整備や教育担当の育成、女性が結婚・出産を経ても活き活きと活躍するためにはどうしたら良いかを話し合い、トライアルを実施するなでしこプロジェクトの立ち上げ、障がい者の雇用の促進と障がいを持った学生の職場体験の受け入れなど多様な取り組みを行っています。

 

働き方改革の実例:トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車株式会社はテレワークによる在宅勤務制度、年次有給休暇の取得促進、女性社員の活躍推進などを中心に働き方改革に取り組んでいます。

ユニークな年次有給休暇取得制度

トヨタでは、有給休暇の取得を推進していますが、これまでの日数の平均は、現業部門で22日、管理部門で19.5日となっていました。そのため、より取得を増やすため、3Days Vacationと銘打ち、1年間で1回以上の3連休を取るように推奨しています。また、有給休暇の有効年数を3年にしており、長期の病気入院や、家族の介護などに備えられるよう、最大60日まで保有する制度になっています。

新たな在宅勤務制度の創設

トヨタでは、テレワークの制度として、FTL(Free Time and Location)という制度を導入しています。この制度では、裁量労働やフレックスタイムが認められている事務職や技術職の社員を対象として、原則自宅をテレワークの場所とする制度です。勤務開始や終了の際には、上司にメールで連絡し、実施する業務内容をスケジューラーソフトへ入力するようにしています。

仕事と育児の両立が出来る柔軟な勤務制度の実施

在宅勤務が出来ない現場の交代制の育児を行う社員に対しては、柔軟な勤務時間の制度で対応しています。例えば、子供が小学校4年生終了までは常に6:00~15:00の勤務シフトを認めたり、所定労働時間を、子供が2歳までは4時間、子供が小学校4年生終了までは6~7時間としたりする短縮制度などもあり、子育て中の労働者を支援しています。

 

働き方改革の実例:中外製薬株式会社

同社では、介護や育児を行っている従業員を中心に、テレワーク・在宅勤務を奨励しています。また、長時間労働を減らすために、活動のフィードバックを行い、情報を共有したり、有給休暇の積極的な取得を促したりしています。つまり、全社員のワークライフバランスを改善していこうというのが、同社の特徴です。その活動の結果、残業の削減や、有給休暇の取得率増加につながっています。また、社員が仕事と私生活両方の相乗効果を追求することにより、それぞれの「質」をアップさせ、企業としての生産性向上を図り、企業の連続的イノベーションをも創出しようとしています。

ワークライフシナジーの追求「WLS」の策定

同社では、2013年に労働者と会社側で協力し、ワークライフバランスについてその考え方を整理したうえで、「ワークライフシナジー(WLS)」を作り上げました。その後、在宅勤務やフレックスタイムのコアタイム短縮などの仕組みの改善を行っています。さらに、2015年から、ワークライフシナジー(WLS)自体を中期経営計画ACCEL 15の中核に据え、会社の中の800の組織に実践できるアクションプランを策定し、関連会社も含めて展開していきました。さらにその後、2016年度からの新中期経営計画IBI18の取り組みにWLSを統合し、全従業員に働きかけを行っています。

外部コンサルタントによる働き方改革プログラムの実施

同社の多様な人材を活かして、付加価値の高い働き方への変革をするための改革プログラムを実施しています。この施策は、従業員が外部のコンサルタントにより働き方改革の意義についてレクチャーを受けた後、チームごとに具体的なアクションプランをつくり、3か月間の改善活動を行った後、成果発表を行い、施策の成果を情報共有するものです。

長時間労働抑制を数値目標で推進

社内の部門ごとに、残業時間に関する目標値(KPI)を設定した上で、職場ごとに達成するためのノー残業デーや会議のルール改善、有給休暇取得日数目標の設定などを行っています。また、人事部から定期的に残業時間など労働時間に関する実態を公表し、全社員に向けた動機付けを行っています。また、現場レベルでの労働時間削減施策として、残業の事前申告を徹底したり、部下の労働時間に関する管理職向けのタイムマネジメント研修を行ったりしています。

 

働き方改革の実例:東急百貨店

同社は、女性が多い職場であることもあり、仕事と家庭の両立を目指した支援制度として、育児中の従業員が活躍しやすい制度や、介護・育児中の社員を対象にした時短勤務制度を行っています。社員一人一人が自分たちのワークライフバランスを考えてメリハリある働き方をすることにより、企業理念で謳っている「お客様にとってなくてはならない存在」を実践できる人材が出来ると考え、実践しています。そのことにより、2015年度には前年に比べて約8割の時間外労働を減らすなど、驚異的な成果を出しています。

実行力のある残業削減策

所定外労働に対しては、実行力のある施策を実行しています。具体的には、ノー残業デーの実施日には、労使がともに職場を巡回し、直接指導するとともに、人事のシステムを活用して管理職に対する残業時間の注意喚起を行っています。さらに、安全衛生委員会や各拠点の人事担当者の会議においては、残業対策を討議し、削減策を実施しています。

朝型の働き方の推奨

同社では、本社社員を対象にして、8:10からのフレックスタイムを活用して、朝に集中して仕事を行うように協力を要請している。そのことにより、残業を削減するとともに、終業後の時間を「自己研鑽」や「家庭の時間」、「外部人脈を広げる時間」に活用できるようにしている。しかし、この施策は朝型の仕事を義務付けるものではなく推奨制度としています。

有給休暇の取得促進と多様な休暇制度

同社では、半期ごとに、8~11日の連続休暇や記念日休暇を取得するように推進しています。具体的には、有給休暇や本人や家族の誕生日などの社員の予定休暇(同社ではアニバーサリー休暇という名称)を事前に部署単位で取りまとめて人事に提出することにより、計画的に有給休暇の取得が推進できています。

 

働き方改革の実例:株式会社ワコール

同社は女性比率が非常に高い女性用下着の専門メーカーです。そのため、出産や介護を機に離職する割合が高く、社員をいかに定着させるかが、同社の大きな課題でした。そのため同社では、次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づくこう行動計画を定め、仕事と育児・介護の両立を図っています。具体的には、短時間勤務制度や休業制度ですが、実施の結果、2010年から2014年の間に育児休業を取得した社員のうち100%が職場復帰した実績を誇っています。

育児休業に対する支援

育児休業に対しては、法律で定めた最低限の支援を上回るレベルで支援しています。具体的には、育児休業の取得を子供が2歳になるまで認めたり、育児のための超過勤務免除の制度を、子供が小学校1年生を終了する時まで取得を認めたりしています。また、育児のための短時間勤務制度も、固定の短時間勤務制度だけでなく、業務の忙しさや社員の事情に応じて選択的に短時間勤務を行うことが出来る、非常にフレキシブルな制度を持っています。さらに、早期に店頭でのフルタイム勤務に復帰する社員に対して、必要な経済的負担を考慮し、子供一人に対して、月1万円の「店頭フルタイム復帰手当」を子供が小学校1年生を終えるまで支給しています。

育児休業取得に対するきめ細かな対応

育児休業を取得する予定の社員に対しては、「仕事と育児の両立支援BOOK」を支給し、全員を対象にした産休取得前、仕事復帰前の面談を行い、スムーズに休暇取得、職場復帰が可能な配慮がされています。

介護休業に対する支援

介護休業に関しても、育児休業と同様、法律の範囲を上回るレベルで社員の休業取得をしやすくしています。具体的な施策としては、家族の誰かが要介護状態になり、社員が介護休業を希望する場合、介護を必要とする家族一人につき通算365日まで3回に分けて取得が可能となっています。この制度は、他の制度と通算ではなく介護のみの単独で365日まで取得が出来るようになっています。

 

働き方改革の実例:花王株式会社

同社では、時間外労働の削減のため、常識を超えた時短支援策を講じています。フレックスタイムにおけるコアタイムの廃止や時間単位の休暇取得など、思い切った施策が功を奏しています。そのことは、時間外労働の削減にも寄与しています。一方、男性に対しても育児休暇の啓蒙活動を行うことで、2015年の育児休暇取得率が4割を占めるに至りました。同社では、ワークライフバランスを単なる仕事と生活の両立と考えず、ダイバーシティやインクルージョンを実現するための環境整備の大事な要素と位置付けています。

メリハリのある働き方を推奨する啓蒙活動

同社では社員参加のもと、働き方改革に関する啓蒙活動を積極的に推進しています。具体的には、社員から公募したワークライフバランステーマのポスターを作成し、花王グループの全国の拠点に掲示して、社員の意識を高めています。さらに、同社のスケジュール管理ソフトやホワイトボードを使用する場合には、「退社時刻宣言」を明示することにより、時間外労働を削減する意識付けを行っています。

フレックスタイムからコアタイムを無くす制度改正

長時間残業やより柔軟な働き方を実現するため、同社では従来から行ってきたフレックスタイム制度に対して、コアタイムを無くし、7時から20時までの時間を全てフレキシブルタイムにする制度改正を行いました。このことにより、育児や介護などを行う社員がより働きやすくなったり、海外業務など時差によって夕方以降の勤務が長時間化することを防ぐことが出来るようになったりしました。特に本社の人事や経理、システム部門の働き方に好影響を与えたようです。

1時間単位で取得可能な休暇制度の導入

従来の同社の休暇制度の最小単位は半日でしたが、実際に用事を済ませるのに必要な時間は数時間な場合が多く、半日として休暇を取得するのは無駄があるとの声が上がっていました。この声に対応し、同社では年休のうち5日間と家族の介護目的の休暇を、1時間単位で取得できる休暇制度に移行しました。この制度の変更により、より柔軟な休暇取得が可能となりました。

 

以上となります。みなさんのお勤め先ではどのような取り組みをされていますか?是非、参考にしてみてください。

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