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人事発令に伴い情報システム部門では多くの作業が発生します。今の企業は情報システムの使用が必須です。もし社員が異動したら情報システムのアカウントも移動先の部署や役職に合わせて変更しなければなりません。さらに異動に伴うパソコンの回収や配布なども情報システム部門の仕事です。
異動する社員の人数が多い場合など、事前に人事発令の情報を教えてもらわないと異動先に着任後すぐに仕事ができるように準備できない、といったケースもあります。今回は情報システム部門にとって重要なイベントの1つである人事発令とは何か、また人事発令に伴い必要となる作業について紹介します。
人事発令とは
人事発令とは、企業が従業員に対する転勤、採用、退職などの人事異動に関する任命を社内に発表することです。なお人事に関する任命のことを辞令と言いますが、人事発令とは辞令の内容を社内に発表することとも言えます。
そして人事発令は、異動対象者に関係する部門はもちろん情報システム部門にとっても重要なイベントです。まずは人事発令とは、企業にとってどういったイベントかについて紹介します。
人事は企業経営の重要課題
人事発令とは、部門毎に上司が判断して部下を異動させるといった簡単な話ではありません。企業にとって重要な経営資産である人材を適材適所に配置し、企業活動を向上させるための施策です。そのため経営者による経営判断に基づいて実施されます。
なお企業経営にとって重要な経営資源とは、ヒト、モノ、カネに情報を加えた4つとされています。この4つのうちヒトとは社員などの人材のことで、重要な経営資源であるヒトをどの部門に割り当てるかは、今後の企業の業績にも関係する重要な問題です。そのため人事発令とは、部門の管理者による起案に基づき、経営者による経営判断により実施されなければなりません。
このように人事は企業経営の重要な施策です。そのため人事の内容を社内に公表する人事発令は会社全体にとって重要なイベントだと言えます。
人事異動の流れ
人事発令は会社にとって重要なイベントですが、突然発表される訳ではありません。まず異動予定日の1ケ月前くらい前に異動対象者とその上司に内示として伝えられます。これは公式の通知ではなく、社内には秘密にされるのが普通です。
続いて異動予定日の1週間くらい前に社内に公表するために人事発令が通知されます。これは会社の公式な発表で、発表された内容は業務命令にあたることから異動者は基本的に拒否できません。そして異動日に新しい部署で辞令が交付されて、異動先での業務が開始されます。
例えば新卒者が入社する場合、入社式に辞令が交付されますが、その1週間前くらいに人事発令されるので、どの部門に何人配属されるかを知ることになり、配属先となる各部門で受け入れ準備が始まります。さらに入社する新卒者には入社式の1ケ月前より以前に内示として正式採用が通知されているはずです。
人事発令の方法
会社の公式な発表である人事発令は、従業員が全員見られるように文書で発表されるのが一般的です。そして社内の掲示板などで公開されます。またPDFなどで社内のドキュメントシステムなどで公開されるケースもあります。
例えば新卒者が入社する4月1日や、定期異動がある会社は実施日の1週間前くらいに公表されるのが一般的です。なお異動対象者が多い場合は、情報システムのアカウント変更に手間がかかることもあります。そのため人事部門からExcelなどのリストで異動者の情報を入手するケースもあります。
また、定期異動以外でも中途採用や出向など不定期な異動があり、そのような不定期な人事発令もアカウント変更等が必要になるので個別に対応が必要です。
人事発令が公開されたら
人事発令が公表されたら、関係する部門等で人事異動に伴う社内手続きがスタートします。増員が決まった部署では机や椅子のような什器を手配したり、新卒者を受け入れる部門では教育計画が検討されたりするでしょう。その準備期間を確保するために人事発令は異動日の1週間か2週間前くらいに公表されるのが一般的です。
そして人事発令が公表されると情報システム部門は忙しくなります。まず、退職などでいなくなる方からパソコンを回収し、新たに採用された方などにパソコンを配布しなければなりません。また、異動に伴う社員のアカウントの権限を異動日に合わせて変更するのも情報システム部門の仕事です。そのため異動対象の方が多い場合は、異動日に間に合わせるため残業しなければならない、というケースも発生します。
人事発令で発表される異動の種類
人事発令は人事における重要なイベントですが、情報システム部門にとっては異動の種類とその人数が重要です。異動の種類に合わせて異動対象者に適切にアクションしなければなりません。また人数が多ければ異動日に間に合わせてるための準備も必要です。そしてミスが無いように対応しなければなりません。こういった作業はIT統制を維持するために重要な業務です。
なお会社によっては種類の名称が違っていることもありますが、次から一般的な異動の種類は次のとおりです。
- 配置転換
- 転勤
- 昇進・昇格
- 降格
- 採用
- 出向
- 退職・解雇
次から情報システム部門から見た人事発令のそれぞれの種類の特徴について紹介します。
配置転換:所属部門の変更に伴う人事発令
配置転換は担当する業務内容の変更で、所属する部署の変更を伴います。ただし同じような業務を担当することが多く、情報システムのアカウント管理では所属するグループの変更だけで済むケースがほとんどです。
ただし、企業の人事部門や情報システムなどの社外秘の機密情報を扱う部門に異動した場合は、その部門の特殊事情に合わせてアカウントの権限を変更するケースがあります。
転勤:所属部門の変更に伴う人事発令
転勤も配置転換と同じく所属部門の変更を伴う異動です。そのため配置転換と同じように所属するグループの変更だけで済むケースがほとんどです。
しかしそれまで使っていたパソコン等の機器をそのまま使えるとは限りません。転勤先の事業所の担当者と相談して異動者のパソコン等の機器の設定を依頼するなど、着任後すぐに仕事ができるように準備しておきましょう。
昇進・昇格:権限が変更になる人事発令
昇進は平社員から管理職に上がるような下位の職能資格から上位の職能資格に異動することで、昇格とは課長から部長に上がるように上位の職能資格におけるランクが上がることです。
管理職になれば平社員よりも会社の中でやれることが増えるのに伴い、情報システムの権限も追加されます。そのため昇進や昇格したアカウントに対する権限の変更が必要です。
さらに委員会メンバーに任命された場合は、特殊な権限の追加が必要なケースもあります。特に複数のサーバーやシステムにアカウントが登録されている場合、抜けがないように準備して人事発令と同時に反映できる仕組みも必要です。
降格:権限が変更になる人事発令
これは昇進や昇格と逆のケースですが、同じように権限が変更になる人事発令です。やはり抜けがないように準備して人事発令と同時に反映できるようにしましょう。
採用:従業員が追加となる人事発令
採用は就職希望者を社員として雇用し、人員の補充が必要な部署に配属することです。採用された方が情報システムを利用するためにアカウントが必要になるので新規に作成します。
ただし今の企業では、新たに採用された方が正社員とは限りません。パート契約、嘱託契約、派遣契約などの契約で採用される方もいます。また、違う会社の社員が出向社員として自社で働くケースや、業務委託等で別会社の社員が自社内で働くケースなどがあり、同じ事務所で働いていても自社の社員とは限りません。そのような方が情報システムを利用する場合、正社員と使える権限が違うケースもあります。雇用形態に合わせたアカウントの権限を設定してください。
また新規に配属された方が使うパソコンの手配も情報システム部門の仕事です。新卒者が多い企業では、新卒者の配属に合わせてパソコンを大量導入するケースもあるので、購買部門などと協力し配属後にすぐ使えるように準備しなければなりません。
出向:従業員が削除となる人事発令
出向は企業に在籍した状態で、一定期間、別の会社の社員として働くことです。そのため人事情報はそのまま社員として残ります。ただし、自社の業務を担当しないことから情報システムのアカウントを休止扱いにするのが一般的です。
ただし給与は自社から支払い、福利厚生も利用できなければなりません。そのため一部のシステムは使えるようにします。また基本的に出向される方のパソコンを回収しますが、出向先でもそのまま使える可能性もあります。関係部門と相談のうえ適切に対応してください。
そして出向した社員は、一定期間後にそのまま出向先の企業で働くケースもあります。その場合は自社を退職したうえで出向先に雇用されることになるので、別途人事発令が出ます。その場合は次に紹介する退職と同じ手順で対応してください。
退職・解雇:従業員が削除となる人事発令
退職には、就業規定に定められた定年制に従い退職する定年退職、従業員からの申し出により退職する依願退職などがあり、これらは従業員を削除する人事発令です。さらに法律に従って会社が社員を辞めさせる解雇も従業員を削除する人事発令にあたります。
社員が退職したら、その社員のアカウントを使用不可にしなければなりません。なお一般的にはアカウント情報をそのまま残して使用できない状態にします。また、退職に合わせて会社から支給されているパソコンの回収も情報システム部門の仕事です。
また、先ほど採用で正社員以外ではなくパート契約などで働く方もいます。そのような方の契約終了によりいなくなったら、そのタイミングで退職と同じようにアカウントを使用不可にします。なおパート社員や派遣社員から社員に採用される方もいます。そのような場合はそれまでのアカウントを使えなくし、新規に社員としてのアカウントを作成するのが一般的です。
人事発令と内示の関係
人事発令は、本人やその上司など相談なしに突然通知されることはありません。事前に本人とその上司に内示が通知されます。人事発令によって作業が増える情報システム関係者なら、内示の段階で教えてくれればゆっくり準備できるのに、と思われるでしょう。
残念ながら内示と人事発令とを同じに扱うことはできません。次から内示と人事発令の関係について解説します。
内示とは
内示とは、人事発令による正式な辞令を正式に出す前に本人とその上司などに辞令内容を通知することです。そして内示は、辞令発令と当時に新しい職場で勤務できるように準備期間を設けるために異動に先立って発表されます。
例えば異動により勤務地が変更になる場合、異動と同時に新しい勤務地で仕事ができるように引っ越し等が必要です。たま、異動によりそれまで担当していた仕事を同僚に引き継ぐ場合は、引継書などを作成しなければなりません。
さらに新規に採用される方の場合、入社までに社員証の作成や制服等の会社支給品の準備など、期間を要するものもあります。そのため会社によっても違いますが、人事発令の1ケ月前から2ケ月前に内示が行われます。
内示が秘密にされる理由
内示の内容は人事発令の1ケ月前から2ケ月前に人事部門で把握しています。それを情報システム部門に教えてもらえれば、早めに手続きできると思われるかもしれません。しかし内示の情報は秘密にされて、関係者以外にも公表されません。そして、内示が秘密にされる理由は、人事発令直前に変わる可能性があるからです。
人事発令は会社の正式な命令ですが、内示は正式な命令ではありません。異動を命じられたとしても、本人の都合により受けらないケースもあります。もし内示はあったものの辞令が無かった場合、内示を基にアカウントの変更を準備したらその準備が無駄になるだけでなく、部門からクレームを受けることにもなりかねません。そのため人事発令に伴う情報システムの設定変更は、正式な人事発令に基づいて実施されています。
もし内示を受けた方から相談されたら
内示によって勤務地が変わる場合、会社によってはパソコンの設定変更などが必要です。そのため、勤務地が変わる異動対象者がいる部門から内示のタイミングでパソコンの扱いについての相談があるかもしれません。その場合は必要な助言や新しい勤務地の担当者などに手配してください。
ただし、内示段階の人事情報はまだ社内に秘密にされています。関係する人にのみ伝え、人事情報を漏らさないように注意しましょう。
人事発令についてのまとめ
これまで紹介したように人事発令とは企業にとって重要なイベントである異動内容を社内に公表することです。そして人事発令には、配置転換や採用、退職など複数の種類があります。異動対象になった方や部門はもちろん、その社員が使うアカウントやパソコンを管理する情報システム部門にとっても重要なイベントです。
多くの会社では人事発令から異動日までの期間にそれほど余裕がありません。アカウントの権限の変更などに抜けがないように準備し、またパソコンの回収や配布を手配して、新しい部門で辞令を受けた異動者がすぐに仕事にかかれるようにしましょう。